【FIRE】資産運用の出口戦略「4%ルール」とは?

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FIRE達成後に、運用資産を取り崩す方法に「4%ルール」という考え方があります。

名前の通り毎年、資産の4%を取り崩して、その生活費にあてていくというものです。

残りの資産は運用を続けていくこととなります。

この記事を読めば、4%の概要や考え方の基本、注意点などをを知ることができます。

◆今回の記事で分かること◆
  • 4%ルールとは
  • 基本の考えとなる「トリニティ・スタディ」の概要
  • リタイア後の資金の取り崩し方

 

目次

     1.4%ルールとは

       ・毎年、資産の4%を取り崩すこと 

     2.トリニティ・スタディについて

       ・根拠はトリニティ大学の論文「トリニティ・スタディ」 

       ・トリニティ・スタディによるシミュレーション

     3.Early Retire Now筆者の研究結果について

       ・最新の学術データで再シュミレーション

     4.出口戦略について

       ・出口戦略は4%ルール(定率売却)の他に「定額」「期間指定」がある

       ・定率売却とは

       ・定額売却とは

       ・期間指定売却とは

     5.注意点について

       ・為替リスクがある

       ・インフレリスクがある

       ・売却益への税金が考慮されていない

     6.まとめ

 

4%ルールとは1

毎年、資産の4%を取り崩すこと

「4%ルール」とは、毎年、形成した資産の4%を取り崩し、残りの資産は運用を継続していく方法のことです。

資産運用の出口戦略で長年にわたっての調査研究がなされており、今もなお色褪せないのが「4%ルール」という取り崩し方法です。

具体的な行動としては以下となります。

・新たな積立投資を停止
・毎年4%ずつ売却する(取り崩す)
・売却で得た資産を生活費に充てていく
・残りは証券口座に保有したまま(=運用したまま)にする

 

「4%ルール」は、以下の内容が理論上の基準となって、提唱されています。

4%ルールの理論

米国の株式市場の年間平均成長率:7%
米国の年間インフレ率:3%
米国株式の年間平均成長率:7%  - 年間インフレ率:
3% = 4%

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トリニティ・スタディついて
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根拠はトリニティ大学の論文「トリニティ・スタディ

退職プランと経済理論を研究したトリニティ大学における論文「トリニティ・スタディ(Trinity Study)」が基になっています。

原文は以下から読めます。

Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable

トリニティ・スタディとは

リタイア後における「資産の取り崩し方法と維持期間の関係」について、アメリカのトリニティ大学の3人の教授が研究し、1998年に発表したものです。

記録が残っている株式・債券市場の価格データを用いて、一定額の資産を持っている退職者が、毎年一定割合の金額を引き出しつつ投資を行った場合に資産額がどうなるのかをシミュレーションした結果が根拠になっています。

 

トリニティ・スタディによる研究結果は、以下の表にまとめられております。

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出典:Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable

(用語解説とシュミレーションの数値)

Stock :株式 Bonds:債権

株式と債券の割合

株式100%

株式75% : 債券25%

株式50%:債券50%

株式25%:債券75%

債券100%

Payout Period:取り崩し期間(リタイア後の年数)

15年

20年

25年

30年

Withdrawal Rate:資産に対する年間取り崩し率(%)

3%~12%

トリニティ・スタディによるシミュレーション

実際に、この相関図を使ってシミュレーションしてみましょう。

例えば、以下のルールの設定で試してみます。

ポートフォリオ:株式75% : 債権25%
取り崩し期間:30年
資産から毎年取り崩す割合:4%

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成功 =「30年後に資産が尽きない(10%以上残っている)確率」と定義すると

成功確率:98%
失敗確率:2%
と出ました。

これがFIREの考え方のベースとなっている「4%ルール」です。

仮に、

株式100%:債券0%で、取り崩し率:4%なら、成功確率:95%
株式50%:債券50%で、取り崩し率:4%なら、成功確率:95%

となります。


しかし、こちらの調査が、1926年~1995年と過去のものであること、また、「30年という期間だと早期リタイアのシュミレーションとしては年数が足りない」という点から、次の章では、現代に合わせてフォローアップした研究結果を紹介します。

 

Early Retire Now筆者の研究結果について3

最新の学術データで再シュミレーション

最新の学術的データとして、2015年に、Early Retire Nowの筆者が、トリニティ・スタディ の研究結果を現代に合わせてフォローアップしたものを発表しました。

1871〜2015年のデータをもとに

取り崩し期間:30〜60年

取り崩し率:3〜5%

で構成されています。

そちらの研究結果は、以下の表にまとめられております。

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出典:EarlyRetirementNow https://earlyretirementnow.com/

仮に、40歳でリタイアして、100歳まで生きるとして、60年間に渡る取り崩しの調査結果を、以下の何パターンかでシュミレーションしてみました。

ポートフォリオ:株式75% : 債権25%
取り崩し期間:60年
資産から毎年取り崩す割合:4%

成功確率:89%
失敗確率:11%

 

ポートフォリオ:株式75% : 債権25%
取り崩し期間:60年
資産から毎年取り崩す割合:3.5%

成功確率:65%
失敗確率:35%

 

ポートフォリオ:株式50% : 債権50%
取り崩し期間:60年
資産から毎年取り崩す割合:4%

成功確率:97%
失敗確率:3%

 

ポートフォリオ:株式75% : 債権25%、資産から毎年取り崩す割合:4%の場合、取り崩し期間が30年から60年になることで、成功確率が98%→89%に下がりました。

ただ、「そこまで長生きするのか?」という考えや、公的年金等の受給に期待できる場合など、人によっては必要な資金額はもっと少なくて済むと思います。

 

出口戦略について
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出口戦略は4%ルール(定率売却)の他に「定額」「期間指定」がある

資産を売却する方法には、代表的な4%ルールという「定率売却」だけでなく、「定額売却」「期間指定売却」という方法もあります。

定率売却とは

売却指定した投資信託銘柄の保有口数を、指定した割合の口数、「毎月」や「隔月」など、定期的に売却する方法です。

0.1%~50%の範囲で、0.1%単位で指定して売却します。

「定率売却」を選択すべき人は?

・30年以上、資産を残したい

・資産を目減りさせたくない

・子や孫に資産を継がせたい

定率売却は、可能な限り資産を残しておきたい人や、資産残高が減っていくことに不安を覚える人が選択すると良いでしょう。

ただし、証券口座に金融資産を預けていると、資産残高が上下するリスクがあり、定率売却で取得できる金額にブレが生じますので、安定した生活が送れない可能性もあります。

定額売却とは

指定した受取金額に相当する金額を「毎月」や「年金と同じように隔月」など、定期的に売却する方法です。

「定額売却」を選択すべき人は?

・老後資金として、年金に加え、30年程度は最低限のリターンを期待しつつ、現実的な資産の取り崩しを行いたい

定額売却は、毎月や毎年一定の金額を取得したい人が選択すると良いでしょう。

特に年金で足りない分を老後の生活費として利用する場合、安定した収入を得られます。

ただし、想定より長生する「長生きリスク」で、老後の終盤では、売却する資産が少なくなってしまうというリスクもあります。

期間指定売却とは

売却指定した投資信託保有口数を、最終受取年月までの売却回数で等分した口数を、「毎月」「隔月」など、定期的に売却する方法です。

「期間指定売却」を選択すべき人は?

・30年以内に他界するかもしれない

・資産は自分で使い切りたい(子や孫に資産を継がせるつもりはない)

期間指定売却は、運用した資産を全部使い切りたい人が選択すると良いでしょう。

しかし、「長生きリスク」に備えたい人は、売却期間終盤に介護や葬儀費用が不足する可能性で不安になるため辞めたほうが良いでしょう。

 

注意点について
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為替リスクがある

日本から米国株式に投資する場合、為替リスクが生じます。

為替リスク:円と外国の為替相場の変動により、外貨建て資産の価値が変動する可能性のこと

トリニティ・スタディアメリカでの研究結果なので、為替リスクは考慮されておらず、アメリカ人が投資する場合に比べてリスクが増える点には注意が必要です。

ただ、日本人の場合は、老後に公的年金を日本円で受け取ることができるため、公的年金として得る「日本円」と「インデックスファンド」の取り崩しで得られる米ドルという、2種類の通貨で収入を得られ、結果的に「リスク分散できている」という点はメリットかと思います。

インフレリスクがある

4%ルールにおける4%という数字は、米S&P株の成長率7%から、アメリカのインフレ率3%を差し引いて算出されています。

インフレ:モノやサービスの物価が持続的に上昇する経済現象のこと

インフレ率は物価の上昇度合いを表す指標で、前後1年間の消費者物価指数(CPI)を用いて算出されます。

要は、株価が上がっているが、物の値段も上がっているため、その分を差し引いているということです。

ただ、アメリカのインフレ率が約3%なのに対し、日本のインフレ率は1%にも満たない状況が続いているため、計算上はより少ない資産でFIREが可能ということになります。

売却益への税金が考慮されていない

日本では、株式や投資信託を売却したときの利益に対して、20.315%の税金が発生しますが、トリニティ・スタディの研究結果には、この税金が考慮されていません。

そのため、資産を取り崩す際は、手元に残る金額が減ってしまうことに注意しましょう。

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まとめ
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この記事では、資産形成の考え方のベースとなっている「4%ルール」について、元になっている研究結果現在でも通用するのか?について紹介しました。

FIRE達成に向けて、具体的な数値で見える化するプロセスは、大変重要かと思います。

ただし、今回紹介したデータは、あくまで過去のデータから算出された理論上の確率論で、ルール通りに資産運用を行ったからといって、必ず資産を減らさずに生活し続けられる保証があるわけではありません。

いずれにせよ、4%ルールは資産構築の際の参考程度に留めて置き、何が起こっても臨機応変に対応できるように準備をしておきましょう。

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