【FIREを達成するための知識】公的な制度への理解を深めよう

 

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FIRE達成を目指す上で、年金などの社会保障制度への理解を深めることは重要です。

特に公的年金の制度を誤解したままFIREの計画を立てようとすると、必要な目標額は増大し、目標達成が大きく遠のいてしまうことでしょう。

公的な制度への理解は必要不可欠

最低でも、年金(国民年金/厚生年金)、保険(健康保険/雇用保険/労災保険/介護保険)など、社会保証制度の仕組み、給付の仕組みは知識としてしっかり抑えておきたいところです。 

社会保障制度とは

具体的には「社会保険」、「社会福祉」、「公的扶助」、「保健医療・公衆衛生」を総称したものです。 「社会保険」とは、人々が病気やけが、出産、死亡、老齢、障害、失業など生活の困難をもたらすいろいろな事故に遭遇した場合に一定の給付を行い、人々の生活の安定を図ることを目的とした、強制加入の保険制度です。

 

FIRE後でも国民年金保険料や国民健康保険料、介護保険料は払わなければいけません。

例えば令和4年度の国民年金保険料は月当たり16,610円です。

年間だと199,320円の負担です。

さらに、扶養している配偶者がいる場合、国民年金保険料は配偶者にもかかってくる点にも注意が必要です。

場合によっては2人分の約40万円の負担となる可能性もあります。

国民健康保険料は所得により異なりますが、数万円~数十万円の負担になります。

これだけで相当な負担ですね。

 

国の年金制度は破綻しない

よく年金制度の破綻を唱え、不安を煽る人がいますが、これは完全に誤りです。

年金制度は国が社会保障制度として運営管理しているので、日本がなくならない限り、年金制度が破綻することはありません。

少子高齢化に伴い、1人の高齢者を支える現役世代の人数が減り、その負担も増えていますが、マクロ経済スライド(年金額の抑制)や、受給開始年齢の引き上げ、消費税の増税分の投入など、様々な方法で年金制度が破綻しないよう制度改正が行われています。

今では収入と支出、つまり、金保険料と年金の給付を自動的にバランスするようにしていますので、そももそ破綻のしようがないのです。

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出典:プレジデントオンライン(https://president.jp/articles/-/50938)

こちらは、「日本は少子高齢化が進む社会なので、かつては多くの現役世代でお年寄りを支える『お神輿型』でしたが、今は3人で1人を支える『騎馬戦型』、そして将来は1人で1人を支える『肩車型』に確実に変化していきます」という「今のままでは将来世代はこの負担に耐えられません」というありがちな図です。

少子高齢化」というのは今の日本の社会情勢を最もよくあらわすキーワードなので、この話は実に説得力があるように思えます。

 

「働いている人」と「働いてない人」で見ると?


上記の図は「65歳以上か65歳未満かという年齢で区切っただけ数字です。

ただ、そのような区切り方は果たして正しいのでしょうか?

社会保険制度は現役で働いている人が保険料を負担し、逆に働いていなければ年齢が若くても保険料は払えません。

そのような観点で考えると、単に年齢で区切って、その比率を比べるのではなく「働いている人が働いていない人を養っている割合がどれぐらいか」で考えるべきです。

つまり1人の就業者(働いている人)が何人の非就業者(働いていない人)を支えているか、を見ることが大切なのです。

以下の図をご覧ください。

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出典:プレジデントオンライン(https://president.jp/articles/-/50938?page=2)

2020年時点では1人が0.89人を支えており、約30年前の1990年には1人で0.96人、そして半世紀前の1970年の時は1人が1.05人という数字になっています。

なんと、お神輿型と言われていた1970年よりも、今の方が高齢者の数は増えているにもかかわらず、支えている人数自体はわずかですが、減っているのです。

さらに20年後を見てもその数字は0.96人ですからほとんど変わりません。

2040年は少子高齢化がピークを迎える頃と言われていますが、その頃でも今とほとんど同じなのです。

つまり、「何人の働いている人が、何人の働いていない人を支えているか」という観点で見ると、昔からこの数字はほとんど変わっていないし、今後もほとんど変わらないということが分かります。

 

公的年金は終身に渡って受け続けることができる

公的年金に制度には終身給付の原則があります。

仮に納付した保険料以上の給付をもらおうと支給停止はなく、生きている限りずっと年金を受け取れます。

老後20年分のお金を蓄えていたとしても、20年後に元気であったら、その後の生活費が無くて困りますが、公的年金はそのような不確定要素に対する強力な保証となります。

また、FIRE達成のためには「標準的な引退年齢より早くリタイアするための必要資金の確保」と「標準的な引退年齢以降の老後資金確保」の2つを同時にクリアする必要がありますが、公的年金は、一生涯保証されている定期収入となり、これほど心強い"金融商品"は他にありません。

 

早期FIREによる年金受給額低下のリスク

年金制度には公民全員が加入する国民保険と会社員や公務員が加入する厚生年金がありますが、FIRE後はどのように変わるのでしょうか。

年金制度はFIRE達成後も加入する必要があり、60歳までは国民年金に加入して保険料を収める必要があります。

 

国民年金

20~60歳まで40年間収めることで満額がもらえ、未納期間があればその分、分金額が減ります。

つまり、FIRE後に未納期間があれば、満額の月6.5万円すら貰えない試算となります。

そもそも、加入は義務ですので、リアイア後も国民年金保険料を負担することは織り込む必要があります。

 

厚生年金

FIRE後には厚生年金保険料を収める必要はありません。

ただし、老後の年金受給額に影響が出ます。

受給額の計算式

保険料納付期間の平均賃金×保険料納付期間×生年月日等での係数

つまり、「平均賃金が高く、加入期間が長ければ、年金額が多くなる」ということです。

 

20年早くリタイアすれば厚生年金は約半分になる

早期リタイアすれば「厚生年金の水準が下がる」ことは避けれません。

つまり、標準的な老後をスタートした以降の金額が大幅にダウンするということです。

45歳でリタイアした人は65歳まで働いた人に比べて、厚生年金の受給額が約半分になるでしょう。

これは厚生年金の設計が「報酬比例」という仕組みであると同時に本人の加入履歴によって年金額が変化する仕組みを採用しているからです。

ということはつまり、通常のFIREに必要な資金の上積みだけではなく、65歳以降の本来のリタイア生活が始まったとき、厚生年金水準がダウンする分を上乗せしてFIREを準備していく必要があります。

標準的な夫婦は合計で約22万円を毎月貰えます。

基礎年金相当を引くと、約10万円が厚生年金に該当します。

人生の半分をリタイアするのであれば、厚生年金が半分、月5万円がダウン、年間60万円になります。

30~35年位の老後を見据えて穴埋めするのであれば、1,800~2,100万円の上積みが必要です。

FIREによって将来の年金額が下がることを見込んで資金準備を行うことは、考慮しておくべき事と思います。

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